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その場から離れたくて、あたしは逃げ出した。
もしかしたら、やすが追いかけてくるんじゃないか…、とか考えたけど気付けばあたしは1人だった。
きっと、あたしなんか構わずに壁打ちでもやってるんだろうなぁ…。
『ぐずっ』
何か、謎に涙が溢れてきた。
あんなこというなんて思ってなかったよ…。
あれじゃ、本気で全国制覇目指してる人に対して失礼だよ。
「「これより関東大会準々決勝━━緑山中(埼玉)VS青春学園(東京)の試合を始めます!!」」
……始まったんだぁ。
…応援行かなきゃ……。
なんだかんだいっても、無愛想なやすがあたしは好きだ……。
意味わかんないけど、今更思った。
走ってきた道を戻り始める。
パシィッ
ザッ
あれが噂の……青学1年レギュラーかぁ。
でも…、
「ハイッ!!」
やすが押してる。
「「ゲーム2―1チェンジコート」」
フェンスを登って少し乗り出し
『さすがじゃん、やす。はいっ、タオル』
鞄からタオルを取り出しやすに向けて落とす。
「…帰ってなかったんだ」
『なっ「ええ~~~っ、全日本選手権4連覇した元プロの息子さんなの~っ!?」
大きな声で遮られる。
それを聞いて、やすは黙ってベンチに座り込む。
沈黙が続き、それを破ったのはやすだった。
「別に恐縮しないでよ」
静かに立ち上がり、コートに向かいながら青学の子に向かって
「確かにパパの全日本選手権4連覇は未だに破られてないケド、たぶん世界に行っても通用したと思わない?」
……やす…
未だにパパって呼んでるんだ…
と今更思った。
1人バカなこと思ってると
「ふぅーう。汗かくのあんま好きじゃないんだ~~」
また、タオルで少しかいた汗を拭きながら
「汗かいちゃう前に終わらせるからね」
そう言いながら試合がまた始まる。
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