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「じゃあ、今日はここまでだ!!また、明日もびしびしいくからな!!」
「「はい!!ありがとうございました!!」」
あれから、練習をし続け気づけば夕日が隠れ始めていた。
「久しぶりに汗かいだず」
タオルで汗を拭きながら航が言うと
「やっぱり、汗かくの嫌いだなぁ」
とやすがいうと、肩に手を回しながら
「よく言うぜ、オキラクちゃん」
拓馬が少し笑いながら言った。
久しぶりに、みんなの楽しそうな顔を…、生き生きした顔を見た。
何故か少しだけ微笑ましかった。
それに、何よりやすのあんな楽しそうな顔は本当に久し振りに見た。
『…さぁ~ってとっと』
あたしも帰るとしますか。
おもむろに立ち上がり、スカートに付いたであろう砂埃を払い落とし立ち去ろうとしたとき後ろから声がした。
「待てよ、比奈佳。送ってくよ」
振り返れば、制服に身を包みテニスバックを背負って立っているやすがいた。
『…もう、着替えたの?早くない?』
「…別にいいだろ。…行くぞ」
そう言ってあたしの隣を横切ったかと思ったら、スリ!?と思うぐらいの早さであたしの鞄をひょいっと持つやす。
『か、カバンッ』
「これくらい持ってやるよ。……置いてくぞ」
そう言うと先を歩いていくやす。『ま、待ってよ…』
「「ま、待ってよぉ。比奈ちゃん!!」」
「「早く!!置いてくよ?やす」」
まただ…。
昨日から幼い頃の事をよく思い出す。
何か、おばぁちゃんみたい。
あの頃はやすが後ろから追いかけてきたんだっけ…。
今じゃ逆だね。
『…あっ』
「なに?」
気だるそうに振り返るやすにあたしは何でもないと言うように左右に首を振った。
…やす、いつの間にこんなに背中大きくなったんだろう…。
「今日、応援してくれてありがとう」
『えっ』
やすのいきなりの言葉にびっくりする。
「…何か、昔のこと思い出した。」
『……』
「子供の時よく応援してくれてたよな。懐かしくて…、やっぱり比奈佳の応援があれば頑張れる気がする。」
前を見ながらやすは言葉を続ける。
そんなやすの背中をあたしはただ見つめる。
「だから、また試合の時応援してほしい。比奈がガンバレって言ってくれるだけで、頑張れるから。」
なぜかわからない。
都合のいい夢かもしれない。
でも、無性にやすもあたしと同じ気持ち何じゃないかって、少し期待をしている自分がいる。
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