魔物の住む森 -前編-

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「人間よ、何をしに来た?」 私の姿を目にした城の主が、低く地獄の底から響く様な声でそう言った。玉座にゆったりと座るその姿は、ただの魔物とは思えない。 魔王の風格さえ漂わせている。 「貴方の御力をお借りしたくやって参りました。どうか私の話を聞いて下さい」 視線だけで気圧されそうになる意識を押し留めて、そう魔物に告げる。血の如く赤い両眼が、私を品定めするかの様に見つめていた。 ーーーここで怯んでなどいられない… 「お願いします…!一刻を争うのです!」 「人間が魔物(オレ)に頼み事とはな。正気か?」 「貴方しかもう頼る方がいないのです」 断られたら、もう後は無い。 あの方の命を助ける為ならば、形振りなど構っていられない。 誰から何と言われようとも。 例え邪道と罵られようとも。 あの御方と、我が国の為に。 「ーーー話だけなら聞いてやろう」 肘掛けにゆったりと体を預け、魔物が言った。焦る私は、まくし立てる様に一気に話を切り出した。
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