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「Y宅の惨状」の章
Yの自宅玄関ドアを開けた時の衝撃は今でも覚えている。
まず目に飛び込んで来たのは玄関に大量に散らばっている靴とドッグフード。
左手を見ると何の生物が住んでいるか分からない濁りきった水槽である。
そのドッグフードと汚れた大量の靴、水槽のニオイも相まって辺りは異臭に包まれている。
「オ゛エ゛ーッ!ファック!ユー!」
っと言って帰りたくなる所だが、初めてのYの自宅であり、あまり“友達を自宅へ呼ばない”Yの快い誘いでもあったため、失礼に及ばないようにあくびと咳をしてごまかした。
Yはそそくさとホールへと上がり、右手にあるリビングのドアを開けて
「ただいまオカン」
と一言言い、自室である二階へと促された。そう、Yが「ただいま」と言った相手が序章に登場しているKである。Kに関しては後述する。
とりあえず靴の置き場にも困ったが廊下~階段には洗濯したかも不明なホコリまみれの黄ばんだ衣類と、ガラクタの入った段ボールが大量に置いてあり、歩くにも苦労した。
勘違いした俺は
「引っ越してきたばっかり?」
と聞いた。
Yは何やら立腹した様子で
「いや、前からすんでるけど?それがなに?さっさと来いさ!」
と学校にいるときのお人好しのYとは明らかに態度が豹変している。まるで家来が一気に王様になったかのように。
ここからYの部屋へ入室するが、更にとてつもない状況の目撃者となるとともに、友達を
“呼ばない”のではなく
“呼べない”または“呼んでも来ない”
へと理解が繋がることとなる…………
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