【哀しみ】

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【哀しみ】

  【哀しみの媚薬】     時として、底の見えないまどろみまで、   人の心を沈み込ませる…。     孤独や悲壮感は   やがて心に高い壁を与え   周りの存在に   近づくことさえ許さなくなる。     けれど本当は癒されたくて   高くそびえた壁の途中に   小さな穴を開けて待っているのだ。     その穴から見える   外の世界を斜に見ながら     自分だけが悩み…   自分だけが苦しみ…   自分だけが辛く…   自分だけが悲しい…   と、   【哀しみの媚薬】   に浸りたいだけ浸る…。   自分だけが…     という妄想に魅せられて   その深いまどろみと   高い壁に護られて   抜け出す事が出来なくなってゆく…。     それは愚かな行為にみえる…     しかし、傷つき…   壊れかけた心を   再生するには必要な時間。     ただあまりに深く浸り過ぎたなら   媚薬は毒へと変わり   すべての臓にまで染み渡る。     そして心も脳も侵された時…   人ならざるものになってしまうのかもしれない…。     目に映る全てから彩りが失われ…   哀しみという闇へと吸い込まれる。   何度も引き返せた筈なのに…       もしも堕ちてしまいそうなら   足掻くがいい…。   沈んだ先には   光はささないのかもしれないのだから…。    
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