【優しさ】

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  【優しさの媚薬】     誰しもが欲し、   包まれたなら抜け出せなくなってしまう。   勿論誰からのではなく、   愛する存在や、   替えようのない存在からの優しさは、   人の心をどこまでも弱らせてしまう…。     強くもなれるのだが、   やはり弱くもさせてゆく…。   【優しさの媚薬】   を求めて人は、   次々に相手に心を与えてゆく…。   与えた心の分だけ、   媚薬を与えられなくなると、   その孤独に弱くなり、   耐えられなくなってゆく…。     確実にまどろみに堕ちてゆくとしても、   失う怖さから逃れられない。   過度の優しさは媚薬であり、   毒になるのかもしれない…。     全身に廻った媚薬は、   人の体や心に侵食していき、   ぬくもりや、言葉…   笑顔や触れられた指を忘れられない…。     脳に刻まれた甘美な記憶は   捕らえた心を簡単には放さない。     与える優しさよりも   与えられた優しさは   人をまどろみに沈めてゆく…。     深く… より深いまどろみへ…。     あまりの心地よさに   失ってしまうと   人は人でなくなってしまうのかもしれない…。     そうなるのが怖いから、   人は得た優しさを失いたくないのだ…。     たとえ媚薬だとしても…     毒だと知りつつも飲み続けてしまうのだ…。      
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