祈りの喪失

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 とある町に住む淑女。彼女は特別な宗教や思想は持っていないが、毎朝晴れの日も曇りの日も雨の日も、太陽に素晴らしい一日になるよう、そして過ごせるよう祈りを捧げていた。  行為に深い意味はなく、精神衛生上の日課であり、祈りを捧げるとしゃんとした気持ちで一日を過ごせた。    この日も目を覚ましてから、まず祈ろうと朝日の射し込む窓際に歩み寄ったが、奇妙な感覚に捉われ祈ることをやめた。  奇妙な感覚はもやもやした霧となって心の中にまとわりついた。    奇妙な感覚は何なのか、もやもやしたものはどこから来るのか分からず、晴れ晴れとしない気持ちを引きずったまま一日を始めてしまい、訳の分からない感覚とさっぱりしない気持ちは精神的不安を煽り、不注意が目立つ一日を送ってしまった。    寝る前に、この感覚は今日だけのことだと考え、明日はまた元通りになると信じ瞼を閉じた。    翌朝いつものように窓辺へと向かったが、また、奇妙な感覚が身体中に広がり、祈ることをやめた。  得体の知れぬもやっとしたものが心を覆い、気持ちが悪くなっていった。
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