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「あ……」
そのあまりのスピードに出遅れた当時の俺は、見事、その場に残されてしまった訳だが。……いや、そうでも無かったようである。
「ついてこいと言った! ほら、さっさと来い!!」
それまた凄いスピードで俺の目の前まで戻って来た彼女は、そのまま俺の右手を強引に掴むと力任せに引っ張り、俺達はそのまま学校を後にする事となった。
――――――――
恋人の居ない中学生や高校生の憧れの光景……
単に言えば男女が手を繋いで一緒に帰るという光景が、小学校……しかも低学年の2人によって、住宅街の塀に囲まれた狭い道に絵描かれてしまう。
今日初めて会った少女との相合傘。
当時の俺といえど、何かしら気まずかったのか、恥ずかしかったのか。
堂々と胸を張って歩いている彼女の隣を、下を向いてゆっくりと歩いていた。
でもまあ、なんというのか……
嬉しかったんだと思う。子供だった俺にとって、声をかけてくれた彼女の優しさが。
話題は無い。更に人見知りが激しかった俺は、自然と黙り込んでしまう。だからこそ、2人の間に話声が響く事も無かった。
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