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ある日のことだ。
とある店では料理長が泣き、また別の店では冷凍室が満たされない悲しみで泣き、それとは違う店では来店した空腹の客が胃がもたれたと言って帰るということが起こった。
そんな事件にも似た現象が起これば、その惨事を見たいという暇な人間が現れることはよくあることだ。
その人だかりは一時間から二時間の間隔で別の店を覗き見ているのは、他人からしたらさぞ不思議な光景だろう。
その人混みを掻き分けて、台風の目に入ると、そこには若い男が二人。
時間が経ち白くなった脂や、こびりついた液体、それらが付着した純白だったはずの皿は不安定に重ねられていた。
その隣では同じように皿が積み上げられているのだが、それからは甘ったるい洋菓子を思わせる香りがまとわりついて離れない。
壮絶な状況に囲まれて尚、男二人は動きを止めない。
その片割れ、黒髪が揺れると、男でも釣られそうな笑顔を称えた少年が顔を見せた。
またそれと同時にもう一人の表情も垣間見ることが出来る、黒髪の少年が可愛らしいというのなら、こちらは美人と言うべきか。
男には間違いないのだろうが、何か不思議な感情に駆られる。
笑顔が二つ、ついでに言葉も降ってきた。
『今までの注文と同じもの、全部持ってきてくれる?』
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