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「……ここか」
広告の右端に、ギリギリ読める大きさで印刷されていた面接場所の住所を調べてみたら、意外にも家の近くだったと分かったのが今から一時間前。
森野は最寄りの駅から電車で十分の、それほど賑やかでもない駅前にあるビルの前に立っていた。
日曜日なので格好は私服。
森野の通う高校はバイトを許可していたので、なんの障害もない。
あえて言うなら、森野にはバイトの経験が無いということぐらいだ。
身分証の学生手帳がズボンの右ポケットに入っているのを確認し、「よし、行くか」といささか緊張した表情でビルへと入っていく。
それが今から十五分前の事だった。
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「……なんだっていうんだ?」
森野は今、台所で包丁片手に料理を作っていた。否、作らされていた。
目の前には色とりどりの食材達。どれもこれも、森野の知らない物ばかりだ。
「あ、これは知ってる、パプリカだ。へぇ 赤いのや黄色いのが有るのは知ってたけど、紫色のまであったのか……」
「野菜の色とかはどうでもいいから早くご飯作ってぇ~」
と、へろへろな声で森野を激励するのは見た目も同じくへろへろな女性。
相当お腹が空いているのか、ソファにぐったりと身を預けている。
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