396人が本棚に入れています
本棚に追加
森野が見たところ、女性の年齢は二十代前半ほど。背中の中ほどまで延びている髪の色は金髪に近い茶髪で、黒一色の服装。顔立ちは整っていて日本人ぽいのだが、独特な雰囲気がある。おそらくはハーフかクォーターなのだろう。
十五分前。ここでなにがあったかというと、恐る恐る森野がこの事務所に入ると、ソファの上で今にも餓死しそうな女性がか細い声で、「お…お腹空いたぁ」と呻いていたのだ。
流れで、しょうがなく冷蔵庫をあさると、あれよあれよと森野が見たことのない食材が溢れ出てきて、どう調理すればいいのかと困って、今にいたる。
「一口サイズに切って炒めてくれればいいからぁ。は、早く……」
「はぁ、分かりました」
しばらくして、言われた通りに野菜と肉を一口サイズにぶつ切りにし、味付けに塩と胡椒を振りかけて、フライパンで炒めただけの野菜炒めが完成した。
完成したのはいいのだが……見た目が物凄かった。
色が余りにも毒々しい。
紫、青、赤の三色が絵の具のチューブから出したばかりのようなハッキリした色で皿の上を彩っている。これは別に森野のせいではなく、使った食材の色がそのまま、出てしまっているのだ。
「………うぇ」
作っておいて何だが、これは人が食うもんじゃねぇな。と森野は思う。
最初のコメントを投稿しよう!