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「わ、解ってるよ!でもあたしは、そういうの嫌なの!」
葵は矩瑠雛の手を振りほどいた。
「困っている人を見過ごすなんてあたしには……。」
「……葵あれを見てみな!」
葵が視線をやるとさっきの男の子が人の食べ物を盗んでいた。
『まてやー小僧ー。』
男の子は捕まらないと一生懸命逃げていた。
「あ……。」
葵はショックをうけた。
「解ったか葵、これが現実だ。この壊れた世界に生き抜く術を知る孤児もいるんだ。」
矩瑠雛はその光景を悲しそうに見た。
「そう、騙し合い…奪い合い…他人を犠牲にすること……。それが、あいらの生きる術だ……。」
葵はその場に膝をつき崩れていった。
「……解っていた。あの日から今日まで色んな目に合い、そして色んなものを見てきた……。」
矩瑠雛はひざまずく葵の頭に手を置いた。
「ただ、それを信じたくなかった。認めたくなかった……。人は助け合えるんだって……。」
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