不等式 僕<しすたー

4/12
前へ
/72ページ
次へ
世の中には「妹萌え」という文化があるらしい。 いや、それ自体を文化として呼ぶのはどうかという議論はまたにするとして、この「妹萌え」の根幹にあるのは 兄>妹 の基本的な勢力図にあると言える。 例外はあるが、「妹」というカテゴリの基盤たる内在要素とは 「頼りない」「ドジっ娘」「甘えん坊」「従順」「鈍い」 という現実的マイナス要素で構成されており、これらに倒錯する事で、「妹」という集合要素に「萌える」事が出きるのだ。 つまり、逆を言えばこれらを内在しない妹は最早「妹萌え」の文化が許容する範囲の外である。 今、目の前にいる我が妹はそれを体現した存在と言えよう。 僕より頼りになり 僕よりドジを踏むことはなく 僕に甘える事はなく 僕に従順ではなく 僕より鋭い。 「という訳で、僕はお前に萌える事は出来ない。だから家に帰りなさい。」 「それが最後の一文にどう繋がるのか、私でもイマイチ理解できないよお兄ちゃん。」 とある夕食の一コマ。 いつもなら僕の帰りをひっそりと一人で待っていてくれる我が家も、今や僕を裏切ってこのイレギュラーを受け入れている。
/72ページ

最初のコメントを投稿しよう!

978人が本棚に入れています
本棚に追加