事の顛末

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年下の弟妹より優れていない兄という立場は、生まれながらにして得る一番最悪の環境だ。 ましてやそれが妹となればより最悪である。 常に比較される対象が自らより幼い女の子で、それより全てにおいて劣るなど男の子としては恥でしかない。   僕には一つ年下の妹が一人いる。 説明した通り、容姿、頭脳、運動能力、どれに於いても兄である僕は妹に勝るものなどなかった。 僕は常に自分より優秀である妹を敬い、羨み、そして恨み、嫌った。 そしてそんな自分が一番嫌いだった。 僕は自然と妹を遠ざけるようになった。 周りから見れば気づかない程度だろうが、僕は妹に心を許した事がない。 しかし遠ざければ遠ざけるほど、逃げれば逃げるほど妹は僕にすり寄ってきた。 そしてそれを避けようとする自分の弱さに自己嫌悪し、そしてそんな思いをしない為に更に妹から遠ざかり...を延々と繰り返した。 そして僕は高校進学と共に家を出た。 偏差値の高い高校への受験と合格を条件に交渉し、一年間必死に勉強し僕は両親から自立の為の住居と生活費を手に入れたのだ。 最初こそ両親はこれに大反対であったが、件の条件を提示し、なんとか丸め込んだ。 だが妹は遂に一度も賛成する事はなかった。 出て行っちゃ嫌だと泣き、怒り、暴れ。 僕は説得する事を遂に放棄して引っ越しを完了させた。 実家からは一駅くらいの距離でしかない新居だが、妹のいない生活というのは僕にとってそれまでの人生を覆すような生活だった。 順風満帆の四文字を心に踊らせ、気付けば僕は二年生になっていた。 友達もそれなりに多くでき、一年間万事問題なしの学生生活を送った。 そして僕はその一年間、一度として実家に帰る事はなかった。 電話で両親からは何度も顔を見せろと言われたが、高校生は忙しいの一点張りで押し通してみれば一年といった感じである。 だがそれは別に、妹と顔も合わせたくない、という事ではない。 ただ、一度でも帰ってしまえば僕が少しずつ組み立ててきたこの決意が崩れ落ちてしまうような気がしたのだ。
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