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「お前がそこまで僕を追い回す理由はなんだ。僕には毛頭理解できない。」
フォークでくるくると器用に麺を巻いていた右手がぴたりと止まる。
視線は皿に落としたままだ。
「理解できない?本当に?理解したくないだけじゃないでしょ。妹が実の兄である自分の事を―」
「黙れ。」
妹の言葉を遮る。
「とにかくお前との同居なんざ僕はお断りだ。僕に干渉するな。兄妹なんて年齢が一桁の頃合までやってればいいんだ。」
「あとは他人?」
「そうだ。」
「ふぅん。」
カチャン―
フォークを空になった皿の上に静かに乗せると初めて僕の目を見た。
「ならさ。」
言うや否や椅子を蹴り飛ばしテーブルを回り込み、素早く僕の襟首を掴み上げるとそのまま地面に放り投げ、組み敷いた。
僕の背中は地球の重力の助けを受けながら大地と逢い引きを果たし、その代償として肺が深刻なダメージを受ける。
「ごほっごほっ……相変わらず兄への虐待には容赦がないな、刹那ちゃんは。」
「あんまり呼んでくれないから自分の名前を忘れかけたよ。ていうか兄じゃないんでしょ?ならさ、何してもいいよね。まぁ最初から世間体とか倫理的タブーとか、そんなの気にしてないけど。」
「気にしろ。あとそこをどけ。」
「気にする必要ないよ。他人だもの。」
「お前は赤の他人をいきなり地面に組み敷くのか?」
「好きな人なら、或いは。」
体は動かない。
純粋な力では刹那より僕の方が上だろうが、完璧に関節を組まれていて力が入らないのだ。
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