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「あのね。昔読んだ本で、不倫中の女の人が相手に『私は指輪の必要な女だったの』っていうシーンがあったの。」
夕食の洗い物をしながら私は夫に話し掛けた。
「うん。」
夫は条件反射のように頷いて、ダイニングテーブルからテレビを見ている。
「私は指輪のいらない女みたい。」
夫の返事はない。私も黙る。
「ん?指輪がどうした?」
CMに入り、夫がこちらを向く。
「たいした話じゃないの。ビール、まだある?」
「ない。」
私は微笑みながら夫にビールのお代わりを渡し、洗い物に戻る。
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