1月ー指輪のいらない女ー

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「あのね。昔読んだ本で、不倫中の女の人が相手に『私は指輪の必要な女だったの』っていうシーンがあったの。」 夕食の洗い物をしながら私は夫に話し掛けた。 「うん。」 夫は条件反射のように頷いて、ダイニングテーブルからテレビを見ている。 「私は指輪のいらない女みたい。」 夫の返事はない。私も黙る。 「ん?指輪がどうした?」 CMに入り、夫がこちらを向く。 「たいした話じゃないの。ビール、まだある?」 「ない。」 私は微笑みながら夫にビールのお代わりを渡し、洗い物に戻る。
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