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「雪兄~っ、お風呂良いよ~?」
まだ濡れている髪を、肩にかけたバスタオルで拭きながらリビングの扉を開ける。
…が、雪兄はしばらく立っても何の反応もない。ソファーに腰掛けてうつ向いていた。
俺がお風呂に入る前に何やら雑誌を読んでいたので、そのまま寝てしまったのだろうか?
「雪兄…?」
「プッ…」
今度は返事の代わりに笑い声が返ってきた。
「何?どうたの?」
雪兄の前に回り込み、顔を覗き込んだ。
「ブッ…アハハハッ」
俺の顔を見ると更に大爆笑している。涙を浮かべて笑うくらい面白いことが何なのか気になる。
雪兄はただひたすら笑っている。訳がわからなく、ムッとする俺。
「なっ…何だよ!何でそんなに笑ってんだよ!!」
「ギャハハハッ!」
…まだ笑ってる…一体何なんだ?
「もうっ!何だよ!?」
少し怒ったように言ってみるがまるで聞いてないような感じで笑い続けている。
「だっ…だってっ!」
やっと声を発するが笑い声と混じっている。
俺の目の前に雪兄が雑誌を押し付けた。雑誌のとあるページを開く。
そこには『今月の占い』と書かれたページが。
雪兄、事『冬 雪哉(ハルノマエ ユキヤ)』は俺の兄貴で、乙女チック…とでも言うのか、占いや心理テストなどが好きで良く見ていたりする。雪兄は笑いをこらえながらここを見て、と言わんばかりにページのとある部分を指差す。
そこには『恋愛運』と書かれてあった。
「ん?今月の恋愛運?」
俺がそう読むと、一層含み笑いをする雪兄にムッとしながらもため息混じりにそこに書かれていることを読み上げた。
「運命的な出会いがありそうです。すぐに恋に落ちて大恋愛に発展する可能性も…ガンガンアタックしちゃいま…」
「アハハハハ!」
全部読み終わる前に雪兄の笑い声が響いた。
「な…何がおかしいんだよ!雪兄だって同じ星座じゃないか!」
そう、見ての通り(?)俺と雪兄は双子の兄弟だ。顔はまるっきり同じ、なのだが産まれてきた日にちが俺はかなり遅かった。
雪兄は3月31日、俺は4月1日だった。生まれた日を大切にしたいと言う両親の願いがあって、双子だけど学年が違う。
俺は高校1年、雪兄は2年、と言うわけだ。
双子と言っても顔が同じなだけで性格はまるで違う。
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