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晃は机の上に置いてあるラブレターを服の内ポケットに大事にしまってから玄関に向かっていく。
そして、玄関の扉を開けて家の外に出る。
すると、そこには髪がスポーツがりくらい短い男が立っていた。
「晃さん、おはようございます!」
「お、おはよう拳斗(けんと)君。朝から元気だね」
「俺は元気だけが取り柄っすから」
家の前に立っていた男――拳斗は満面の笑みを晃に向ける。
男の名は亀田拳斗(かめだけんと)、れっきとした晃の中学校からの友達――もちろん同級生だ。
じゃあ何故晃に敬語を使ってるのか?
理由は拳斗が晃のことを尊敬しているからだ。
この拳斗という男は非常に義理や人情を大事にする男。
ある出来事がきっかけで晃と仲良くなりそれ以来晃に対して忠誠を誓うように敬語を使っている。
普通でいたい晃にとってはいい迷惑だ。
「け、拳斗君、そろそろ敬語を使うのは止めてくれないかな? ほら、もう僕達高二にもなったし」
「駄目です!
俺は晃さんの子分みたいなもんですよ。
子分の俺が兄貴分の晃さんに敬語を使わないわけにはいかないっす!
それより、こんなところで話していると《あの列車》に遅れるっすよ!」
「そ、そうだね。じゃあ走ろうか」
結局今日も拳斗を説得することは無理だった。
晃は拳斗には気づかれないくらいで小さくため息をついた。
しかし、彼は落ち込んでいる暇なんてない。
彼らにはどうしても乗っておきたい電車があったのだからだ。
すぐに話を切り止め、走って近くの駅まで向かっていく。
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