谷底へ流れるもの

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 新橋で下車し、銀座線から総武線快速に乗り換える。それにあわせて彼女も移動し、付かず離れず背後を歩く。君津行きのボックス席に座り、目を瞑れば彼女の事を考えていた。  その華奢な体から放たれる負の気配。その体から伸びた手足。薄い化粧にシンプルな服装。まさに恍惚。地下鉄の中で確認した彼女は完全に焼き付いた。  --とことん来るつもりだな。なら、この小旅行を楽しんで貰わないと。  新橋駅より五十分、千葉県の県庁所在地である千葉駅。関東の政令指定都市でありながら、都市開発が計画されてからも十年近く代わりのない、寂れた街だ。土日でも歩く人は少ない。
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