苺オレと初雪と、愛するよりも愛されたい

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   しかし、今のままではいくらなんでも。高校2年にもなって一緒に登下校している幼馴染み男女なんて、いまどき絶滅危惧種に認定されるぞ。  ──と、俺の頭ではそれなりにまとめられていたそんな問題も、どうやら風子にとってはまさしく「ふいうち」だったらしく、彼女は足を止めて振り返った。固まったその顔の中で、まぶただけがパチパチと開いたり閉じたりしていた。 「なんで?」 「いや、なんでって……おかしいじゃん、高校生にもなって一緒に登下校とか」  言ったはいいが、何故か妙な罪悪感に苛まれている俺。そんな俺をよそに、風子は「ふーん」と小さくうなると、顔を正面に戻した。  背中を向けているので今の表情はわからないが、振り向く間際の顔からは、表情らしいものは消えていた。 「いいよ、別に」 「へ?」  いやにあっさりと承諾したな。  ぽかんとしていると、風子はすいと道の端に寄った。  辺りをたんぼで挟まれた寂しい道の真ん中に、自販機が一台、場違いなかんじに置かれている。  田舎の貴重な自販機だが、いちおう冬には「あたたかい」ジュースも売られているという優れものだ。  
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