苺オレと初雪と、愛するよりも愛されたい

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   確かに。限りなく普通だ。これ以上ないってくらいに、平凡で平和な日常だ。  ならば、俺の言ったようなバラバラになるという選択が、普通じゃないのだろうか……?  けれど、それはこの年頃の男女としては至極当然のことであり、異常な状況ではないはずだ。むしろこの年で一緒に登下校なんていうほうが異常であり、しかしそれによって起きる、この和やかな状況も異常なわけではなく──、いかん、頭が回りそうだ。 「確かに、今のこの状況もおかしいってわけじゃない」 「でしょ」  風子がカフェオレのふたを開けた。それに習うように俺も苺オレを開け、一口あおった。甘ったるい味が舌の上に広がり、俺はぷはっと息をついた。 「なに、お前はつまり、俺が好きなわけ」  本気で訊いたつもりが、風子は軽蔑するような視線を俺に注いだ。 「なにそれ。太一って意外と自意識過剰?」 「いや、そうじゃなくてだな」  顔の前で右手を振り、慌てて否定を表した。  だって普通そう思わないか? ──「普通」ってあっさり使っちまったな。  
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