15人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
確かに。限りなく普通だ。これ以上ないってくらいに、平凡で平和な日常だ。
ならば、俺の言ったようなバラバラになるという選択が、普通じゃないのだろうか……?
けれど、それはこの年頃の男女としては至極当然のことであり、異常な状況ではないはずだ。むしろこの年で一緒に登下校なんていうほうが異常であり、しかしそれによって起きる、この和やかな状況も異常なわけではなく──、いかん、頭が回りそうだ。
「確かに、今のこの状況もおかしいってわけじゃない」
「でしょ」
風子がカフェオレのふたを開けた。それに習うように俺も苺オレを開け、一口あおった。甘ったるい味が舌の上に広がり、俺はぷはっと息をついた。
「なに、お前はつまり、俺が好きなわけ」
本気で訊いたつもりが、風子は軽蔑するような視線を俺に注いだ。
「なにそれ。太一って意外と自意識過剰?」
「いや、そうじゃなくてだな」
顔の前で右手を振り、慌てて否定を表した。
だって普通そう思わないか? ──「普通」ってあっさり使っちまったな。
最初のコメントを投稿しよう!