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「だから一緒にいるとか喋るとか、なんかしら行動で示さないと不安なんだよ。本当にこのひとあたしといるのかな、もしかしてあたしが見てる幻覚じゃないかな、とかって怖くなるの」
「大袈裟だろ」
「うん、大袈裟なの。大袈裟なぶん、根強いのよ」
風子はカフェオレの残りをぐびりとあおった。
俺の苺オレは、まだ半分ほど残っているにもかかわらず、すっかり冷めきっていた。
それを見ていた俺は、はっと気付いて鞄の中をあさった。
「そうだ、これの金っ……」
「いいよ」
普段はがめつくて、間違ってもひとに奢ったりなどしない風子から発されたこの衝撃的な一言に、俺は凍りついた。
しげしげと、寒さで赤くなったその顔を見ていると、風子はにこりと微笑んだ。鼻の頭も真っ赤だった。
「餞別」
言うと、彼女はくるりと踵を返した。
色素の薄いツインテールが、ふわりと揺れた。
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