苺オレと初雪と、愛するよりも愛されたい

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   そして風子は、先ほどとは打って変わって明るい調子で、声を張り上げた。 「あー、お腹減ったぁ!」 「…………」  歩きだしたその背の低い後ろ姿を、俺はしばし眺めた。  ──『食料に飢えている子どもは、愛情にも飢えているのです』──  なら……あいつはどうなんだろう?  答えの出せない問いかけに立ち尽くしたまま、俺は白い息を吐き出し、暗い空を見上げた。  ──答えが出せるのならば、それはきっと風子だけだろう。  俺は一度目を閉じた。まぶたの裏側には、寂しいたんぼ道をたったひとりで歩くツインテールが残った。  白い初雪に染まって、その姿はいやに儚げだった。  
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