淡路島戦区

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かつて聞きなれた、重く――そして力強いエンジン音―― そう、日本軍が世界に誇る――葉月もかつて慣れ親しんだ90式戦車だ。 「葉月!ジャベリンミサイル取ってこい!」 「了解!」 今、葉月と島屋の持つHK416では90式戦車の破壊は不可能だ。 90式戦車を破壊するには対戦車ミサイル――それもかなり強力なもの――が有効である。葉月はジャベリンミサイルを取りに武器庫に走った。 なるべく目立たないように姿勢を低くして、闇にまぎれて武器庫へ向かう。 と、次に90式戦車とはまったく違うエンジン音と羽音が聞こえてきた。 新日軍の通常配備するAH-64Dの羽音よりも少し軽い羽音―― 「AH-1Sだ!」 日本軍の配備する主力攻撃ヘリ、AH-1S。 若干時代遅れになりつつあるものの、対地攻撃には絶大な威力を持つAH-1Sに、日本軍はさらに不利になった。 いくら歩兵の装備が先進的とは言え、兵器の前では歩兵は無力だ。 90式戦車が放った120mm滑空砲の着弾音と、AH-1Sが頭上を越えていく羽音を聞きながら、武器庫に飛び込んだ。 武器庫内は混乱状態だった。 HK416を抱えて外に飛び出していく物、兵舎からようやく脱出できて装備を取りに来たものなど―― そんな隊員を横目に見ながら葉月は武器庫の奥へと進む。 武器庫のさらに奥の部屋のドアを半ば蹴り開けるような勢いでドアを開けて奥の部屋に入った。 そこで目に入ったジャベリンミサイルと予備弾薬を取り、来た道を再び戻り、90式戦車の破壊へと向かった。
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