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間中が電話を切ってから
数分後…
息を切らした三十代ぐらいの男の人が喫茶店に入って来た。
キョロキョロと店内を見回し、私達を見つけるとテーブルまでやって来た。
「羽柴っ!」
間中は、留守番していた犬が帰ってきたご主人様を見つけた時のような目の輝きを放った。
本当に『わんっ!』と言って飛び付きそうな勢いだ。
だが、反対に『羽柴』と呼ばれた男は殴りそうな勢いで間中を怒り出した。
「まったく…アナタは!勝手に居なくなったと思ったら…このお嬢さんは、どうされたんですかっ!?」
かくかくしかじか…とは言ってないが、手振り身振りを交えて今までの経緯を間中が説明し出した。
間中の興奮して少しづつ赤くなっていく顔に対して、羽柴の顔はどんどん青くなっていく。
「病気の人連れ廻して何をやっているんですかっ…!申し訳ない、東城さん。救急車呼びましょうか?」
羽柴は私の横に来てしゃがみ込むと、本っ当に申し訳なさそうな顔をしている。
この人は
間中の何なのかな?
「いえ…薬を返して貰えれば…家の者を呼んで…帰ります」
「ああっ!?ますます申し訳ありませんっ」
間中の手元にあった薬を素早く取ると、私の手にしっかりと握らせた。
…やっと、帰れるぅ。
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