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「そうですか。ありがとうございます。とても、助かりました」
礼斗が羽柴に向かい、頭を下げ礼を述べた。
羽柴の表情は、複雑そうだ。
「東城さん、具合が良くなったら連絡下さい。勝手なお願いで申し訳ないのですが…どうしたのか、とても気になってしまうので…」
そう言って、私の手に連絡先が書かれた紙を握らせた。
私にちゃんとした謝罪をしたいのだろう。羽柴の気持ちも分からなくはない。
その謝罪の原因を作った間中は自分の立場が分かっているのか有り難いことに、礼斗が来てからはずっと無言だった。
「じゃあ、行こうか…本当にありがとうございました」
私を抱き上げ、もう一度礼を述べると車の助手席へと乗せた。
「あ…紅茶代…」
払ってない、と思ったが車はすでに発車していた。
まぁ、いっか…あと一回ぐらいは会うかもしれない。
話しを合わせてくれた羽柴に礼を言いたいし、いつになるかは分からないがその時に返そう。
握らせられた連絡先が書いていある紙を握り直し、目をつぶった。
閉じた瞳がとても、熱い。
ようやく帰れるという安心感でいっぱいになった私は、直ぐに眠りについた。
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