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「また連れてるのね、その猫。」
そう言って唯は黒猫を撫でる。黒猫も気持ちよさそうだ。
「とまぁ、それはいいとして、この荷物1人じゃ動かせないのよ。手伝ってくれる?」
指さしている先には博物館のロビーに置いてあるのと同じ形のベンチがある。女性1人では確かに重すぎる物だ。
唯と椛はそのベンチを持ち、それをロビーに運び入れる。
博物館に入る前に黒猫は肩から下り、どこかへ行ってしまった。
ロビーにベンチを運び入れた頃には時刻は5時を過ぎており、仕事を終えた職員が帰り始める。
やがて唯も仕事を終え、椛も時を同じくして帰る。
椛の家は博物館の近くにあるマンションの一室だ。ここから歩いても10分はかからないだろう。
博物館を出ると例のごとく黒猫が飛び乗ってくる。
少し歩いてから唯と別れ、椛は帰路につく。
しかし夏場の5時はまだ日も高く、7時くらいになるまでは日は落ちない。そしてまだ蒸し暑い。
椛はAIのナビゲーションに従いながら機械的な歩き方で家へ帰る。
マンションの前につくと黒猫がいつも通り椛の肩から下りてどこかに走っていく。
それを見送って8階までエレベーターで昇り、部屋の鍵を開け、部屋の中に入る。
部屋には何もなく、ただ日が差し込んでいる。
今日は特にやることもない。椛は壁にもたれた状態で自分の電源を切った。
また明日も、オリジナルとの仕事の日々が始まる----
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