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泉のほとりにたたずむ少女を見つけると、ウォンは満足気な顔をした。彼女に歩み寄る。が、すぐ隣まで近づいても、彼女は彼に全く気が付かない。彼の手が彼女の肩に触れると、びくりと上半身を跳ねさせて、彼女はようやく彼の姿を認めた。
「驚かせちまったな、悪い」
彼は怖ず怖ずと謝った。彼女に悪い印象を持たれては、仕事にならないからだろう。驚いた彼女よりも、寧ろ彼の方がうっすらと汗ばんでいた。
「わたしこそ、ごめんなさい」
彼女は頭を下げて、しとやかに謝罪した。失礼な反応をしてしまったためか、単に恥ずかしく思ってか、彼女の頬は僅かに赤みを帯びている。とりあえず、恐がられてはいないのだと察し、彼は安堵の息を漏らした。
「俺が担当のウォン。よろしくな」
そう言って、彼はニッと笑う。が、彼女は困ったような顔をした。彼女は何も知らない。
「詳しい話は後だ。今は、少し雑談でもしようじゃねーの」
困惑のあまり口を閉ざしてしまった彼女に、彼はそう切り出した。光の蝶に目を細め、彼女は戸惑いながらも頷いた。
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