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もしも、君に出会えていなかったら、今何をしていただろう。
もしも、違う形で君に出会っていたら、ずっと隣にいてほしいなんて思わなかっただろう。
始まりはたとえ最悪でも、今をいいと思えることが大切だと気づいたから。
一緒にいる時間はまだまだ短いし、甘いことを言っていると言われるかもしれないけれど、何があってももう二度と離れない。
それだけは譲らない。
本気だから、なおさら譲れない。
立ちはだかる障害の壁がどんなに高くとも──
「……で?」
どうしてこんなに偉そうなのかはわからないけれど、颯希はソファーにふんぞり返り紗浬と煌を冷たい視線で交互に見る。
煌が今思うことは、高校時代どうしてこの視線に反抗することができたのか、という不思議な疑問。
思考が逸れていることはわかっているが、こうでもしないとダラダラと冷や汗が常に伝う。
「…お兄ちゃんは高校の時の煌しか知らないのに、なんでわかったような風に言うの?」
「今も昔も変わってないだろ」
「私は今の煌しか知らない。高校の時にどんなことをしていたかなんて全然わかんない」
隣で話し始めた紗浬を見れば、冷たい視線に立ち向かうように真っ直ぐ見ている。
自分がしっかりしなければいけないのに、なんとも情けない。
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