箱いっぱいのみかん

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 四月に九州の実家を離れ、埼玉にある会社に就職した。初めての仕事、知らない土地、初対面の同期。分からないことだらけだし、仕事はキツいけど、寮で友達もできたし、東京も近いので、毎日が楽しかった。それはそろそろ一年たつ今になっても変わらなかった。ただ、一度も実家には帰っていなかった。一度でも帰ってしまえば恋しくなって仕事を辞めてしまいそうだったからだ。  ある日、そんな実家から大きな段ボールが届いた。あまりの大きさに部屋に持って帰るのが大変なくらいだった。  部屋に帰ってさっそく開けてみた。箱の中身はたくさんのみかんだった。実家にいた頃は大好きでよく食べていたが、ここ最近は全然食べてなかったこともあり、なかなか食べる気になれなかった。   『コンコン』    部屋の扉がノックされた。扉を開けると、一番の友達の笹川が居た。    「遊びに来たぜ!入っていい?」   俺は何のためらいもなく笹川を部屋に入れた。  しばらくの間、DVDをみたり、漫画を読んだり、だべってたりしたが、笹川がふと気付いたようで、「あの段ボールなに?」と聞いてきた。俺は実家からみかんが送られてきたんだと答えた。すると、笹川は食べていい?と聞いてきた。どうせ俺は食べるつもりもなかったし、かといって腐らせるのももったいなかったので、好きなだけ食べていいと答えた。  笹川は段ボールの中からいくつかみかんを取り出すと、それを美味しそうに食べていた。  そのあともゲームをしたりして遊んでいたが、笹川は明日も仕事なので日付が変わった頃に解散となった。俺もすることが無くなったのでベッドに入り、眠りに就いた。  ………でも、この時はまだ気付いていなかった。このみかんが元でとんでもない事件が起きることも、破った伝票の裏に御札も貼りつけてあり、それを知らずに破ってしまったことも………
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