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「何でぃ、いーじゃねぃかい…たまにゃハードボイっても」
「当直の刑事、金忘れたって呼びつけた奴が気楽に吐く台詞ぢゃねぇ……」
歳は20代半ば、パリパリの紺のスーツに赤いネクタイしめた、長い黒髪を首の後ろで束ねたその青年は、怒鳴る気力も失せて、げんなりと肩を落とした。
―『イグレシオン』―
その名で呼ばれる中規模都市。
そのネオン街の一角にある『チャリオット』と看板掲げたBar。
先程から入り浸って無駄にハードボイっていたのは、この街の警察署、『イグレシオン署・陰契課』に勤務する年輩の刑事である。
―『陰契課』―
耳馴れぬその課は、決して表に出る事のない“人外”事件を取り締まる、陰と契約せし言わば特殊捜査課である。
“人外”―
呼んで字の如く、人あらざる者達。
―とか―
言えば聞こえはいいが、その仕事の大半は、人外の引き起こした事件の事後処理担当である。
とまぁさておいて―
年輩の男性―『ロイナス=イースタン』警部は、チョイと葉巻を一吹かし。
―日々人外相手に死と隣り合わせの俺達は、こうしてブランデー片手に英気を養うモノなのだ―
「だぁああ!超ウゼーよ酔っ払い!!」
イラッと。
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