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「ほら、バス、出ちゃう。」
「あのさ…」
「うん?」
「帰るなよ。」
それは、彼が初めていった言葉だった。
「明日、電車で帰ればいいじゃん。」
「一時間目から授業だからさ。」
ごめん。そう、口にはできなかった。
だって、私も同じ気持ちだったから、諦めたくなかった。
「また、来月。」
「わかったよ。」
彼はあきらめて手を離した。
そして耳元で、
「愛してるよ。」
そうささやいてくれた。
また、会えるのだから、悲しまない。
次に会うときまで、私の笑顔を覚えていてほしい。
そう思いながら、涙をこらえ、
「私も」
と笑顔で、バスに乗った。
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