プロローグ

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「悪いがこの目の色は生まれ付きだ」 この台詞ももう何度目だろうか…… 俺は生まれ付き目が蒼い。 今羨ましいって思った奴。 ならお前が俺と代わりやがれ。 なんて事を言った所で現状は変わんないしな。 それにもう慣れたさ。“異端”にはさ。 よく考えろよ? 目が蒼ってのは世界規模で見たら別に珍しくも無いし、ざらにいるだろ? でもな、それが黄色人種の、日本人であり得ると思うか? 黒髪に、蒼眼だぜ!? 確かにたまにいるさ。 俺の蒼い目を羨ましがる奴も、綺麗だって言ってくる奴も。 でもな、大半の奴がこれが生まれ付きだって知ると離れてくんだよ。 「ふっふん!嘘だろ!!それに本当なら尚更気持ちが悪いね!!君は!」 そうそう。こんな風に頑なに信じなかったりする奴もいる。 人間は自分達と異なる物を嫌うんだ。 魔女狩りや、踏み絵なんかがいい例だな。 だから俺ももう慣れ―― その時、一瞬だけ銀色が俺の視界を横切った。 初夏の太陽に照らされた銀色は、ほんの一瞬の間にも関わらず俺の脳裏に色濃く焼き付いた。 風に靡く白銀のそれは、まるで一本一本がプラチナのように眩く、そして金属では到底作り出せない柔らかな動きをしていた。 「訂正しろ!!お兄ちゃんの瞳は綺麗だ!お前の方がよっぽど気持ちが悪いにゃあ!」 気が付いた時には、いつの間にか俺の後ろにいた少女は俺を庇うように前に出ていた。 小さな体と小さなな両手を精一杯広げる少女。 しばらくその後ろ姿に俺は呆気にとられていたが、やがて少女の行動の意味を理解し、俺の口元は自然と緩んでいた。 そう。 この小さな少女は、俺を庇ってくれているのだ。
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