親指姫

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   ――まずは今の私の状態から述べようと思う。  身長は十円と同じ、体重は舞い散る木の葉と同等、言わば存在感が皆無のサイズだ。    次に今の状況。簡潔に言えば非常にマズイ。目の前でハアハア言ってる犬に生命活動を奪われようとしている。  涎垂らさないでよね。軽いトラウマになりますよ?    要は、だ。私は今まさにデットオアアライブの状況下に置かれているのだ。下手な動きを見せれば食物連鎖に巻き込まれかねないと言う事だ。  誰か助けてと叫びたいのは山々なのだが、そんな事したら即座にパックンチョとやられかねない。しかも叫んだ所で、誰にも気付かれなかったらジ・エンド。だからこうして身動き一つ取れずに犬とにらめっこしてるのだよワトソン君。    ……思考までおかしくなってきたな。ワトソン君て誰だよ。  もう好きにしやがれ犬っころ。胃液で溶ける前にお前の腹の中で私の最後の武勇伝を刻んでやるよ!
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