親指姫

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  「さあ来やがれ犬野郎! 我、最後の一瞬まで、テメェの腹の中で舞い狂ってやるよ!」    ふ、決まった。この私の勇士に恐れを抱き、犬っころも逃げ出すだろ――ん? なに口を大きく開けて近付いて来てるのかなワンちゃん。『来やがれ』なんて冗談に決まってるだろ、本気にしないでよお願いだから。    え、あれ? やだ嘘。  なんで犬の口が眼前にまで迫って来てるの? 本当に食物連鎖に巻き込まれちゃうの? やだよ、犬の腹の中でシュワシュワーって溶けたくないよ。   「いやあああっ! 助けてよ誰かーっ!」    ――パックンチョ。    人気のない道で、誰にも気付かないまま一つの命が消えた。  この美人女子高生の儚くも短い人生は、犬によって終焉を迎えさせられたのだ。   「……なにやってんだお前」    ああ、お許し下さい。  私は美しいからこそ儚いのです。佳人薄命という言葉は私のために存在するのです。
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