親指姫

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   『離れるな』なんて、コイツなりに心配してくれてるのかな? 従う気は全く無いけど。  大体『助けてやれる』という言葉は間違ってないか? 誰が元凶で、誰が被害者か分かって発言してるんだろうな? じゃないとぶっとばすぞ。    自分に非がある事に気付きもせず、小説をパラパラと捲りながら歩いているこの男、名を鳥宮犀斗(とりみやさいと)。  黒に染まる髪は別段長い訳じゃないが、手入れを怠り気味なのかボサボサあちこちに跳ねてる。少しは身なりに気を使え。  顔立ちは簡潔に言えばイケメンというやつで、ちょっとキツイ目には眼鏡がかけられているが、視力がそこまで悪い訳でもないらしい。本人曰く「かけてる方が落ち着く」だそうだ。うん、私には全く理解出来ない。    まあ要は、だ。タキシードや白衣なんかがとっても似合いそうな紳士顔と言うわけだ。その貧弱そうな身体はただいま学生服に覆われてるけどね。  そしてついでに言えばその顔立ちに恥じないくらいの秀才君。高校生活が始まり早三年目になるのだが、その間一度たりとも学年トップの座を明け渡す事は無かった。
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