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それは、彼……【日乃森シオン】の宿命だった。
世界間を跳び、世界に跳ばされ、そして降り立つ。
シオンの場合は、風送りの翼で跳ぶか、或いは世界に喚ばれて跳ぶかの二択となる。そして初めて降り立つ世界では、得てしてこうなるのだ。
ドシンッ! という大きな音と共に物凄い揺れが観測された。
この地にそんな設備が有ればの話だけど……
「痛たたたた~、相も変わらずのこの跳ばされ方。いつか死ぬんじゃね? 俺」
日乃森シオンは数千年……
否、一万年単位で生きている【神域】に至る者。
神域……即ち、神の領域に至りし人間。
神域者は人の理から外れている、その為シオンはテロメアが損傷する事は無く、老化しないし肉体的な寿命も無い。
だけどどれほどの永き刻を生きようが、今の100年の充実には及ばいだろう。
唯一在るとすれば、嘗て愛した女性が生きていた頃くらいか?
そう、あの銀髪銀瞳の少女が生きていた“あの日”くらいだろう。
「さて、と……此処は一体どんな世界なのかな?」
見回したところ、無人の荒野といった感じだが……
「居るな、間違いなく……人間が」
しかも、如何にも“殺気です”という気配を漏らし過ぎのド素人だ。
これでもし隠れているつもりならば、もう一度4~5歳の子供に戻って隠れんぼからやり直すべきだろう。
そんな思いが沸々と湧いてきたものだった。
「お前等さぁ、いい加減隠れてないで出て来いよ!」
シオンは周囲に向けて怒鳴り付けてやる。
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