不思議な力

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「ふぅ…」 ステージ裏に引いた俺は、軽くため息をついた。 会場からはアンコールがかかっているが、気にしないようにする。 できるだけ応えてあげたいとは思うものの、正直あの場でもう一度歌うとなると俺の心臓が保たない。 事務所からも、アンコールには応えないように言われてるしな。 それに、あんなキャピキャピしたキャラを演じるのはかなり疲れる。 見た目はかわいいアイドルでも、中身はどこにでもいるような普通の男子高校生だからな。 「Michiruちゃんお疲れ様」 ここの会場のスタッフさんが紙コップを持って近付いて来る。 「あっお疲れ様ですー」 「いやー、Michiruちゃんは本当に良い子だねえ。普通のアイドルは裏に引っ込むと急にだらけてわがまま娘になるのに」 言いながら、紙コップを渡して来た。 中身はオレンジジュースだった。子供か。 …まあ、好きだけど。 俺は「ありがとうございます」と言って受け取る。 「いえ、そんな、お…私なんて全然良い子なんかじゃ…」 あぶねえ。危うく「俺」って言う所だった。 ていうか…そうなのか。アイドルなんて結局そんなもんか。 子供の頃、なんかのショー見に行った時(たぶんなんたら戦隊とかそういう奴だった気がする)に、司会の綺麗なお姉さんが裏ではスパスパ煙草吸ってたのを目撃した時と同じ心境だ。
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