不思議な力

9/30
前へ
/73ページ
次へ
俺は頭の中で自分の男の姿を想像して念じた。 するとその瞬間、俺の周りを光が包み込み、その光がなくなった時には既に男に戻っていた。 何よりの証拠として、あの重くてデカい胸がなくなっている。 「あ」 ステージ衣装を着たままだった。 今の姿はとても見られたものではないだろう。 今のままで姿見の前に行く勇気は、俺にはない。 とりあえずさっさと着替える事にした。 バックの中に入っているジーンズとドクロのマークが入ったティーシャツを手早く着る。 因みにティーシャツなのは今が夏だからだ。 「石崎さん、もう戻りましたよ」 俺の声はいつもの声変わりした低い声に戻っていた。 うん、やっぱりこっちの方がしっくりくる。 「本当かい!?本当に戻ったのかい!?」 「…声を聞けば分かるでしょう」 「ん?…ああ、確かにみっちゃんの声だ。Michiruの可愛らしい声じゃない」 …可愛らしい声じゃなくて悪かったな。 いや、自分の声が可愛らしくても気持ち悪いだけだが。
/73ページ

最初のコメントを投稿しよう!

293人が本棚に入れています
本棚に追加