直球少年

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 霞んだ目で辺りを見回したが、男はおろか助けようとした女まで何処かに消えていた。  二人組の警官がこちらへ歩いて来る。  すると警官は、やおら乱暴に俺の襟ぐりを引っ付かんで、パトカーに押し込めた。  その夜俺は、一晩を留置所で過ごし、翌朝取り調べを受けた。  俺は自分が被害者である事や、警察の、俺に対する取り扱いの不当を小一時間、めげずに訴えた。  結果、頭のハゲかかった警官は、いかにもメンドウ臭そうに、渋々俺を釈放した。  俺はそういう一連の不愉快さをギリギリと噛み締めながら、休日の街を、ゴリョウカクからヒヨシ町へ歩いていた。  ヒヨシ町までの道のりは遠い。  俺はその遠い道のりをテクテク歩いた。  俺は、持て余した時間を消化する事に必死だった。  もし俺に蓄財が無ければ、或いは次の仕事を探して忙しく毎日を送る事も出来たかもしれない。  しかし、向こう3ヶ月は何とか食い繋いで行けてしまう様な蓄財が、俺の勤労意欲を削いだ。  大学を中退してからというもの、夜は朝までバイトをして、眠って起きたらまた夜で、休みの日には酒を呑む、それ以外の生き方を、俺は知らない。
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