直球少年

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 ヒヨシ町に入り、高校生の頃仲間とよくタバコを吸った公園で、どこかのガキの、ヘタクソなトランペットが聞こえた。  その音は、昔の自分を思い出させて、俺を一層不愉快にした。  俺は公園を足早に通り過ぎ、アパートに帰ると無意識に、埃を被った電子ピアノの蓋を開けた。  白と黒との鍵盤の上を、自在に駆け回る筈だった指先は、或いはもつれ、或いはつまずいて、思う様には動かない。  笑いがこみあげた。  俺はあのクソトランペットに感化されたのか。  バカバカしくて、やりきれない。  俺は電子ピアノのスイッチを切って、いつもの様に、ゴロリと床に転がった。  腹が減るまでこうしていよう。どうせ、する事なんて無いんだから。  そう考えて寝転がってはいたものの、何故かどうにも具合が悪い。  尻がムズムズ、背筋がモゾモゾとして、落ち着かない。  と、気が付いて見れば俺はジッと、さっきの電子ピアノを見ているのだ。  コリャいかん。  俺はこうした、イワユル、音楽欠乏症に悩まされる事がしばしばあった。
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