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しかし、それは決まって、スバラシイ演奏を聴いた後に訪れるものであって、今日の様な、ガキの、ヘタクソなトランペットに感応した事など一度も無かった。
これはイヨイヨ深刻だ。
などと考えているうちに、もう日は傾きかけていた様で。
ギュルッと腹が鳴ったのをきっかけに、俺は立ち上がって、近所のコンビニへと向かった。
部屋を出て、例の公園に差し掛かると、トランペットの音が聞こえる。
「あのガキ……」
思わず声が漏れる。
今朝から今まで、ずっと練習してやがったのか。
トランペットは俺の血液を沸騰させながら、つまずく。転ぶ。
この、ドヘタクソが。
音程が悪い。
イヤ、そもそもこいつは楽譜が読めるのか。
曲は……ホルストの『第一組曲』。
「なってねぇな」
俺は自分の行動にビックリ仰天した。
全く無意識の内に、俺はこのガキに歩み寄り、声を掛けていたのだ。
「うるせぇよ。俺は忙しいんだから、あっち行ってろよ」
生意気なガキだ。
「暇だから練習してんだろ」
「暇じゃねぇよ! アンタ誰だよ!」
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