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――アンタ誰だよ!――
知るか。俺にだってよく解らない。
フリーターか、ニートなのか、それとも……。
「俺は音楽家だ」
本当にそうか? 自問しながらも俺は続けた。
「トウキョウのM音大で3年間指揮の勉強をした。事情で中退したけどな。音楽は3歳からバリバリやってる、お前の大先輩だ」
「指揮って、トランペット関係ねぇだろ!」
「そんなことは無いさ。楽器の事を知らないで指揮は出来ねぇからな。トランペットの事だって、少なくともお前の8000倍は知ってるぜ」
俺はそう言って、俺の持つトランペットの知識をそらんじてみせた。
――トランペットはトロンバ属に属する金管楽器で、他の金管楽器と共にその起源は新石器時代まで遡り……、トランペットという名称が最初に登場したのは、イタリアの詩人、ダンテ・アリギエーリの詩の中で、云々……――
「分かったら明日またここに来い。
地域の騒音問題を解決するのは、住民として当然の責務だからな。大人は大変だぜ」
俺はガキを散々コキおろして、最後に少しくすぐってやる。
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