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拝啓 店長殿
清秋の候、店長殿におかれましては、益々ご清栄の段、お慶び申しあげます。
さて、この度は貴店のアルバイトの身でありながら、《あんまん》を勝手に食べてしまいました件につきまして、一言お詫び申し上げたく、筆を取らせて頂いた次第でございます。
言い訳がましい様ではございますが、店長殿もご存知の通り、秋の冷え込みも厳しくなって参りました。
私はあの日、店外のゴミ箱の袋を換えに、外へ出たのでございます。
私、こう見えまして真面目なタチでございますので、ゴミ箱の袋を換えるだけでは、いつもお世話になっております、店長殿への恩返しにはなるまいと考えまして、ゴミ箱の中から外から、それはそれはキレイに清掃したのでございます。
そうして、お店の中へと戻って参りますと、貴店自慢の馥郁たる《あんまん》のカオリ……。
まるで店長殿のお人柄を、脳髄に映し出すかの如き、暖かで優しいカオリが、私の鼻孔から、冷えたカラダに染み入るのでございますから溜りません。
こうとなっては、誰がその誘惑に打ち勝つ事が出来ましょうか。
イイエ、出来ません。如何な聖人君子と云えども、あんなカオリに見舞われては、もうヒトタマリもございません。
それからの私ときたら……。
エェ、それはもう、むさぼり喰らいましたとも。
そうしてみましたら、又、貴店自慢の《あんまん》の美味たること、マサに天上の甘露が滴り落ちたかと思われるばかり、上品な甘味に、私、改めて虜になりましたと同時に、この《あんまん》ある限り、貴店の安泰は磐石だと、そう確信致しました次第でございます。
そうした次第でございますので、何卒、寛大なるご処置を賜ります様、平にお願い申し上げる次第でございます。
敬具
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