やっちゃん-SIDE STORY-

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黒く闇に染まった池の周りを埋め尽くすように、緑に光った蛍が舞う。 それは凄く幻想的で、非現実的。 しばらく我を忘れて立ち尽くす。おおよそ東京近辺では見れないような光景。 頭の中が真っ白になる。 そう、真っ白に… ふと、隣を見ると、やっちゃんは泣いていた。 辛くないわけじゃなかった。 怖くないわけじゃなかった。 その笑顔の下に、彼は人並みの涙を隠していた。 僕たちに心配をかけたくない。 きっとそう思っていたんだろう。 そうなんだ。 やっちゃんはそういう男だったんだ。 せきをきったように俺たちは泣いた。 無数に光る蛍が、本当の僕たちの背中を「そっ」と押してくれたんだ。 それから2ヵ月後、やっちゃんは静かに息を引き取った。 なぁ、やっちゃん、俺は思うんだ。 これはサヨナラじゃないよな? 俺達は一生親友だよな? ただ、離れてるだけだよ。 必ず俺もそっちに行くんだ。 またきっと会えるさ。 会ったら死ぬほど馬鹿話しようぜ! いつものお前の笑顔をまた見せてくれ! そうだろ? なぁ… やっちゃん。 もうすぐ、また蛍の季節がやってくる。 そしたらお前に会える日を思い浮かべよう。 俺にはやっちゃんという親友がいる。
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