1468人が本棚に入れています
本棚に追加
カタン
描きかけの絵を前に、筆を下ろした。
どうしても気分が乗らない。
淡いラベンダー色の壁紙で覆われた部屋に掛けられた、小さな壁掛け時計に目をやると、もう二十二時を越えた所まで針が動いていた。
そういえば明日、学校でスケッチに使うときのブラシを、買いに行くのを忘れてたんだった。
嫌なことを思い出して、思わず溜め息をついた。
最近危ない事件とか多いけど、
少しくらいなら外出しても大丈夫よね?
まだ、二十二時だし・・・・。
仕方なく、近くの二十四時間開いている量販店に行く事にした。
私が住んでいた田舎と違って、東京って何でも揃うんだ。
だって、二十二時なんて、私が住んでいた田舎では、コンビニエンスストアでさえ閉店してたのに、都会では、量販店でも二十四時間営業なんだから、最初は驚いた。
便利でいいと思うけれど、眠らないこの街に、時々恐怖を感じる時があった。
田舎の事を思い出して、はあ、と溜め息をついた。
私は、何時も田舎でいじめられていた。
生まれつき目が悪かったので、分厚い牛乳瓶の底のような眼鏡をかけていたのもあって、『ダサ子』というあだ名をつけられ、無意味にいじめられた。
だからかも。一人が好きなのは。
最初のコメントを投稿しよう!