♯1 出逢い

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  カタン 描きかけの絵を前に、筆を下ろした。 どうしても気分が乗らない。 淡いラベンダー色の壁紙で覆われた部屋に掛けられた、小さな壁掛け時計に目をやると、もう二十二時を越えた所まで針が動いていた。 そういえば明日、学校でスケッチに使うときのブラシを、買いに行くのを忘れてたんだった。 嫌なことを思い出して、思わず溜め息をついた。 最近危ない事件とか多いけど、 少しくらいなら外出しても大丈夫よね? まだ、二十二時だし・・・・。 仕方なく、近くの二十四時間開いている量販店に行く事にした。 私が住んでいた田舎と違って、東京って何でも揃うんだ。 だって、二十二時なんて、私が住んでいた田舎では、コンビニエンスストアでさえ閉店してたのに、都会では、量販店でも二十四時間営業なんだから、最初は驚いた。 便利でいいと思うけれど、眠らないこの街に、時々恐怖を感じる時があった。 田舎の事を思い出して、はあ、と溜め息をついた。 私は、何時も田舎でいじめられていた。 生まれつき目が悪かったので、分厚い牛乳瓶の底のような眼鏡をかけていたのもあって、『ダサ子』というあだ名をつけられ、無意味にいじめられた。 だからかも。一人が好きなのは。  
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