♯1 出逢い

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そういうこともあって、私は田舎を抜け出して来た。 上京資金や学費は、高校を卒業前に事故で亡くなった親の遺産が手に入ったので、それを当てた。 田舎にはもう戻るつもりは無いけれど、此処も私の居る場所じゃない。 私は、一生孤独で独りなのだろう。 でも、別に淋しいと思わなかった。 それはただ、他人と触れ合う事に慣れていなかっただけかもしれないけれど。 そして東京に来てからは、田舎の時の様にいじめられることはなくなったけれど、誰もが皆、私に無関心だ。 学校に行っても、一人で絵を描いていれば時間が過ぎた。 けど私は、それで良かった。 学校に通い始めて一ヶ月。 私は何を相談できる友人も、恋人も居なかった。 絵を描いている時が、一番自分の落ち着ける時間だった。
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