クラーケン

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●海の魔物 古代から中世・近世を通じて海に生きる船乗りや漁師にとって海の怪は大きな脅威であり、その象徴ともいえるクラーケンは、彼らから怖れられる存在であった。 凪(なぎ)で船が進まず、やがて海面が泡立つなら、それはクラーケンの出現を覚悟すべき前触れである。 姿を現したが最後、この怪物から逃れる事は叶わない。 たとえマストによじ登ろうともデッキの底に隠れようとも、クラーケンは船を壊し転覆させ、海に落ちた人間を一人残らず喰らってしまうからである。 というような伝承が語り継がれた。 船出したまま戻らなかった船の多くは、クラーケンの餌食になったものと信じられていたのである。 それは近代においても変わることが無く、幽霊船マリー・セレスト号が見つかったとき(1872年)、この船が無人となった理由として様々な検証・憶測がなされたが、その中には「乗員が全てクラーケンの餌食になった」という説も存在した。
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