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モモチとパン屋
一瞬だけ目を丸くしたが、すぐに
「そうかい。」
と言って奥へと歩いて行った。
モモチにとってパンはホームレスがもったいたものが初めて見たもので
未知なものであったが、店中に行き渡るいい匂いが空腹を刺激した。
とにかく口にしたくて堪らなかった。
戻ってきた男はパンを3つ程持ってきて
モモチの前にそれを差し出した。
「はいよ。事情は分からないけど、お前さんも大変なんだね。」
「...かたじけない。」
一言お礼を言うと、モモチはパンを一口齧った。
「美味い!」
今まで食べたことのないおいしさに、?が落ちそうだというのはこういうことなのだなと思いつつ、
パンを貪るように食べ続けた。
「んう...ぅぐ...!!」
「おやおや、そんなに急いで食べるから。」
コップに水を入れてモモチに渡した。
「とても美味かった。今まで口にした何物よりもだ。此れは何というものか、教えてほしい。」
「これはあんぱんだよ。...お前さん外国人かい?」
「...いや。」
老人の反応を見るに、この世界では一般的な食べ物らしいな、とモモチは思った。
「まあ、ここに来てパンをくれと言うくらいだからね。お前さんも色々あるんだろうね。」
ホームレスに物を恵んだだけはあって、
あんぱんを知らないような変わった人間にもまともに接してくれる。かなり懐が深い。
「いつか、焼きたてを買いにおいで。」
老人は優しく微笑んだ。
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