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「将軍様の御呼びだ。」
みすぼらしい囚人服から帷子に戻れたモモチは、家臣の同行のもと、将軍の間に連れて来られた。
将軍が現れると、一同深々と礼をし、将軍の表情を窺うように顔を上げた。
将軍は堅く凜とした表情が印象的だが、完璧な城が老朽して微かにひびが見えている…そんな感じであった。
「例のやつか、伊山。」
「はっ、こいつがいつぞやのモモチという男でございます。」
伊山と呼ばれている家臣は手でモモチの頭を押さえ付けて頭を下げるよう催促した。自身も深々と礼をし、小声でモモチに耳打ちをした。
「ほれ、挨拶せんか」
「理不尽に拙者を捕らえた男に何故」
「な、何を無礼な!」
「まあよい、そのようなことを言っても今は仕方がない。モモチよ、お前を仮釈放したのにはもちろん理由がある。」
将軍の命令で、家臣の傍らにいた使いの者が襖を開けた。
そこには眠っているような娘が一人、布団の中に横たわっていた。
「お里が妖怪に襲われてから、起きないのだ…。」
モモチは立ち上がり、家臣に勝手に動くなと怒鳴られるがお構いなく娘の所へ歩み寄り、周りの痕跡を調べた
「これは、時空妖怪…か」
「やはりそうか。」
「しかし…」
「捕らえられたことに不憫を感じるなら謝る。頼む、娘を、取り戻してはくれまいか…!」
涙ぐみそうなのを押し殺して、将軍は潰れそうな声を発した。
そして誰も見たことのない、将軍の土下座が目の前で行われた。その衝撃は多くの家臣を怯ませた。
「いけませぬぞ、下賎な者に!」
「権威など…愛娘の命の上に立ってはならぬのだ!」
それを何も言わずに見ていたモモチはゆっくり目を閉じて静かに答えた。
「承知。だがこのままでは無理だ。それはお主が一番わかっていよう。」
「ああ…」
「風の噂で、拙者から奪った例のものは、財政難の為に貴重品の一つとして売り払ったと聞いたが」
「大丈夫だ、すでに取り戻してはある」
「ククク…よかろう」
「あとは、」
「篠原家であろう。その者となら話をつけて、客間で待たせてある。どの時空へ行ったか、以外は…だが」
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